ギャラリー島田に『没後30年展 鴨居玲と神戸』を観に出かけた。
若い頃鴨居玲の作品を何点か観て「暗いなあ。」と思い、その後海文堂ギャラリーで観た時は薄暗いギャラリーの中で暗い絵が凄みを放っていたのを思い出す。
今回あらためて観ていると暗闇の中から強い力で鴨居の世界へ引きずり込まれるような妖気を感じる。
今回は絵画だけでなく自筆のコピーの書簡類もファイルしてテーブルに置かれていて、客も少なかったので椅子に坐ってこれらをじっくりと読ませてもらった。
中でも知念正文宛ての手紙のなかに「指の指紋が無くなり爪が割れ?腕が傷み...」というような文章がありこれらの作品を作り上げるのに、やはりそれほどのデッサンや習作を重ねていたのだと知り胸を打たれた。
絵具が何層にも重なりあって分厚くなったパレットをみてもそれは窺える。
知念正文を叱咤激励する手紙には鴨居の優しさが溢れている。
絵を描くだけでなく小説や評論などを読むことを勧める。鴨居自身もたくさんの本を読みこんでいたのだろう。手紙を読んでいるとその文章の素晴らしさにも驚かされる。
じっくりと鴨居玲に浸って外に出て雨上がりの涼しい坂道を下って行く。
神戸の街もすっかり秋めいて来た。