火曜日、いつもより少し遅くなって朝日新聞を開くと「文藝春秋」の大きな宣伝広告版が眼に飛び込んできた。
今年の芥川賞受賞作、津村記久子の「ポトスライムの舟」の全面広告である。
それではと、今日は買い物日ではないのだが、近くのららぽーとの中の本屋まで自転車を走らせる。
久し振りの「文藝春秋」である。
若いころは単行本が出る前にまず文芸雑誌を読んだものだが、最近はほとんど買わない。
家に帰って早速読み始める。
ナガセ(主人公)が自分の働くライン工場の掲示板に張られた『さるNGOが主催する世界一周のクルージング』のポスターを見て、163万というその費用がこの工場の年収と同じ額だと気づいて、その金額を貯めようと決めるのだが、これはピースボートの主催する地球一周クルーズのことだろう。
これには4年前に私の知人(当時で60歳の男性)が参加して、旅の様子をHPで逐一報告していたのを読んでいたことがある。
結局主人公はお金は貯まったが旅には行かなかったのだが。
題名にもある「ポトス」は最もありふれた観葉植物で繁殖力も強くて私も昔育てた覚えがある。
主人公ナガセもこの「ポトス」を百均のコップにさして育てている。
なにか特別のことがあるわけでもない、誰にでも体験可能な日常がずーと綴られている。
これに似た本を最近読んだことがあると思い本箱を探ってみるとあった。
武庫川の「街の草」で買ったコミック、高野文子の「miss Ruki るきさん」である。
両方とも若い女性(アラサー)が主人公なのだが色恋沙汰は皆無である。
まず若い男性は出場してこない。
だからドラマもない。
一瞬、私にも書けそうなんて思ってしまう。
いまどきの芥川賞ってこういう作品なんだなんて納得。
でももう一冊違う作品も読んでもいいかなとも思う。