古書柳さんのブログに教えられて、昨日さっそくシネ・ヌーヴォに出かけてきた。
この日は1936年作の『有りがたうさん』。川端康成の掌編「有難う」を原案にとパンフに書かれているが、あいにく私はこの本を読んでいない。
主演は「有りがたうさん」と呼ばれるバス運転手の上原謙とバスの乗客(酌婦役)の桑野通子。
上映後にお話をされた映画評論家の上野昴志さんによると、桑野通子はこの映画を撮り終ってまもなく31歳で亡くなったそうである。
この映画では着物姿だったが、途中バス休憩で外に出た時に立ち姿がアップされたが、スタイルのよさが眼をひいた。上野さんによると洋服姿になると抜群のスタイルだったらしい。
彼女の娘が桑野みゆきとのこと。
ああそうなのか。桑野みゆきは私も知っている。
軽快な音楽にのって伊豆の山道を乗り合いバスは行く。
狭い山道で出会うとよけてもらわないとバスは通れない。その度に運転手は「ありがとう。」と声をかけて行く。
皆には「ありがとうさん」という愛称で呼ばれて親しまれている。
時代背景は深刻な不景気のなかバスには、東京に身売りされる娘をつれた母親、流れ行く酌婦なども普通の乗客たちに混じって乗っている。その乗客たちの会話やバスの走る先々に映し出される映画評論家の上野昴志さん曰く「まさに1936年のその時の風景」が延々と続いて行く。
途中、道路工事にかりだされていた朝鮮人の労働者達の白いチマチョゴリの姿が写されていたが、全体に特別なドラマがあるわけでもなく古ぼけて見にくい白黒映画なんだけど、なんだろう。
天才とも呼ぶ人もいたという清水宏監督の映画のよさはもっと何本も見るしかないだろう。